久しぶりに顔が青ざめた朝。
毎朝愛犬りくと散歩に行くのが日課なのですが、
ウッドデッキの掃き出し窓から我が家は出入りをしますので、
帰ってくると一旦窓の前で足を拭くんです。
おばんです、イヌの召使いイガリです。
窓を開けたら我先にと入るワンちゃんですから、
綺麗にしとかなければなりません。
飼い主が片膝をついて、リクの後ろ脚を拭こうとしたその時です。
ソン。
ん?
ソン。って聞こえたぞ。
毎日繰り返しているルーティンの中にソン。は無い。
ソン。ってなんだ?
なにがソン。したんだ?
ウッドデッキの上で考え込む飼い主。
(今回もこんな話で申し訳ありません)
微かに違和感を感じた左脚のポケット。
あるはずの重みがない。馴染みのあるあの重みが。
まさか。
スマホがソン。したのか…..
そうです。
ウッドデッキの約1cmの隙間から、
地面に向かってスマホがソン。したのです。
ソンなことありますか?
ソンな奇跡のようなことがありましょうか?
想像していただきたいのですが、
OBさんも情景が浮かぶと思うんですが、
あの隙間に、隙間と同じ向きで、まっすぐに、デッキにガツンと当たることなく、
垂直落下してスマホが地面に静かにソン。することなんて有り得ます??
確率で言えば0%と歴史が証明していると思うのですが、
歴史を塗り替える出来事が小さいこの町で起きてしまったのです。
静かに青ざめるやつだぞ
まず始めの行動は会社への連絡。
ビジネスマンとして当然だ。LINEを送らねばならない。
よし、スマホだスマホ。
ソン。しているんだった。
LINEが送れない。
スマホがソン。しているから送りようがない。
スマホが表向きで転がっているなら、
デッキの僅かな隙間から棒でも伸ばしてLINEを開き、
器用に「スマホおちたのでピンチです」と、
文字を打てなくはないが(打てるわけない)、
あいにく彼は背中を向けている。これは無理だ。
棒作戦は儚く散った。
ここでひらめく。
会社のスマホがあるではないか。
そうだそうだ、そうだった。
スマホは2台、の時代を生きていたんだった。
イトウ社長あてにメールを送る。
「スマホおちたのでピンチです」
いや、もっとそれらしい報告はしたのだが、
確実に出社は遅れてしまう。
なぜなら、ウッドデッキを外すという荒業は静かな早朝にはできないからだ。
せめて8時。
ご近所さんだから大目に見てね割引を適用してギリギリ8時が関の山。
それ以上早いと、隣のおばちゃんが「あきひさくん何かあったか?」と
心配して塀越しに現れてきてしまう、それはダメだ。
8時までは行動に移すことができない=出社が遅れる
この方程式は揺るがない。しばしのクールタイム。
一旦落ち着こうと深呼吸をする。
ちょっとだけならいっか。
悪魔のささやきに負け、ちょっとだけ電動工具を使ってネジを緩めようと試みる。
我が家は硬木のウリンデッキのため、ネジがガッチリと食い込んでいる。
それは当然把握しているので、
まぁ1枚くらい外せば良いから大丈夫だと高を括る家主。
そーっと工具を使用する。
ガガガ!!(澄み切った朝に鳴り響く)
ネジは強固で一切回らない。
逆に工具側の先端が折れる始末。
ソンなばかな。
これでは8時まで待ったところで勝算がない。
どうしたらいい、用意していた手札が一瞬で無くなってしまった。
デッキを切る?いや、ダメージが大きすぎる。
たかだかスマホがソン。しただけで、代償があまりにも大きい。
スマホをソンしただけなのに….。
途方に暮れかけたそのとき、
我が家の窮地を幾度となく救った大幸運人間こと妻が口を開く。
テープでくっつけたら?
はい?
何を言ってるんだろうか。
テープでくっつける?
あんなに奥深くに落ちているスマホにテープを?
状況を分かっているのかい?
届くわけないだろう?
ましてくっつくわけないだろう?
気づけば、畑に使う緑棒を引っこ抜いて2本連結し、
先端にテープを貼り付けていた。いや、ねっぱしていた。
大幸運人間が言うことは間違いがない。
間違えさせるわけにはいかない。
原始的な手法だとかそんなの関係ない。
旦那としての責任が重くのしかかる中、もう一人の大幸運人間を呼ぶ。
ゆうと、カモン。
登校直前の中1息子をデッキに連れ出し、制服姿のまま重役を担わせる。
年頃とかそんなの関係ない。
白い目で見てきたってお父ちゃんは何もぶれることはない。
父から的確な指示を飛ばす。
[指示内容]
この隙間から父が棒を2メートル差し込むから、
テープの先端がスマホと重なった瞬間に、
上から別の棒でグイッと押して両者をねっぱしてね。
ねっぱしたら父が慎重に引き寄せるね。
(ねっぱす、ってくっつけるって意味ですよね?)
無事ねっぱすことに成功
息子グッジョブだ。
こんなにスリリングなクレーンゲームはしたことがない。
そーっと棒を引き寄せる父の動きはほぼ泥棒。
彼の目にどう映ったか知らないが、結果良ければ全て良し。
妻が言うことに間違いは無し。
かくして、いつもよりも早い出社となったのでした。
我が家は今日も平和です。


